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左から来る

右からは来ません

羽化するのだろうか

歯医者ネタが続いているけれど、様子見のステータスだから以前のように飲むことは可能な限り控えている。

おまけに禁煙を始めたばかりだ。脱皮したての甲殻類のようなものだ。

己の弱さを知っているから、危険な場所へはなるべく近づかないようにしている。

付き合いが悪くなって申し訳ない。

ニコチンが徐々に消え去ってゆく僕の身体。随分と呼吸が楽になった。

何せ20年以上も吸い続けてきたのだ。以前は呼吸が楽じゃなかったことに気付いてすらいなかった。それが当たり前だったのだ。

離脱症状である眠気から這々の体で僕は逃げ出すと、僕を禁煙させた彼女との会話を思い出した。もちろん決して彼女を恨んでいるわけではない。

 

「ねえ、昔の彼女はどんな人だったの?」

「どうした? それを聞いてどうする。話したところでお互い何ら良いことはないさ」

 

このような質問に対する正解はない。

おそらく彼女が知りたいことはそんなことじゃない。

何らかの理由で不安を感じているのだろう。

僕らは付き合いが浅い。彼女は僕の心の内を知りたくて仕方がない。

もしも納得するならば頭の先から足の爪先まで全て見せたって構わない。

ありもしないのに、どこかにほころびがあるんじゃないかと気になって仕方がないのだ。

 

僕が答えても答えても、新たな質問を投げ掛けられる。

彼女の怖れや怒りを彼女が自覚しない限り、この質問は何度だって繰り返される。

その怖れや怒りの矛先が、僕に向かってしまっていることすら気付いていない。

誰かに与えられなかった罰が、僕へと与えられている。

そう。彼女はそれに気付けていないのだ。

力づくで押えこむことは容易いが、できれば僕の相棒であって欲しい。しもべは要らないんだ。

だから僕は可能な限り黙ってそれを受け入れ続けるだろう。彼女が自覚しなければ意味を為さないのだ。

 

もたれ掛かってきたのは彼女なのに、僕にもたれ掛かったことに驚いている。

まるで臆病な野良猫だ。

 

”私はあなたを失うのは嫌です”

 

彼女はそう明らかに宣言したかと思えば、次の瞬間には『なぜあなたは私を?』と。

馬鹿正直な僕に当てられたのか、日毎に彼女の葛藤は強くなっていて、彼女は苦しそうだ。

 

その葛藤の向こうに見え隠れしている君が僕に話し掛けていたことは知っている。

僕は君を心待ちにしている。

たとえ何年待っても君と語らうのは価値があることだと思っているから。 

 

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僕の気持ちを強く表明することは好ましいことなのか、そうでないのか。悩ましい。