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左から来る

右からは来ません

年の差のある二人

長い付き合いの友人から連絡があった際にその意図が分かることがある。

連絡してくる時刻や表向きの用件から何となく察してしまう。

 

 あ、この着信。こいつはおそらく癌か深刻な病状だろう。

こいつは悩み事か。何かを相談したいのだろう。

こいつは女と別れたんだろうな。行かなきゃ。 

 

自分に超常的な力が宿っているとは思っていない。

行動パターンから推測した結果と、事実が偶然一致したに過ぎないと思う。

このような推論もAIで実装可能なのだろうか。

 

「実は俺もね、17歳年下の子と付き合っていた時に、俺なんかよりも歳が近い人と付き合った方が良いと言って別れたことあるんだ。そりゃ、彼女のこと好きだったけどね。色々とあったよ」

「へえ、うちらと逆だね」

「年齢が離れすぎていると年上の方が気を遣うもんだよ。おそらく向こうの両親がいい顔しないだろう? 俺はそう思ったんだ。お前の彼女もそういうところあったんじゃないか?」

 

僕がそう問いかけると奴はこくりと頷いた。僕らの後ろから、七輪の上にすっと網が乗せられた。僕は何枚かの薄切りの肉を網へと載せる。

赤い肉の色が白みがかった色にみるみる変わり始める。

 

「真剣に相手を思うほど、そうなっちまうもんさ。相手にとって良い選択とは、相手の幸福とは何かと。何年か付き合っていたんだろう? きっと愛されていたのさ、お前は。その選択が正しいのか間違っているのかは別として」

 「俺、これからどうしたらいいんだろうな」

「人は誰かと一緒に居たとしてもずっとひとりなんだ。生まれてから死ぬまで」

「……なんだよ、奥が深いことを言うなあ」

 

僕は肉を再度裏返すと、酒を口に含んだ。奴は顔を顰めながら顎の辺りをさすった。

 

「済まない。落ち込むのは分かるよ。ナナの時は俺も相当来てた。覚えているだろう? でも、この地球には何十億と女は居る。……おい、見てみろよ。牛タンが焦げちまうって」

 

七輪の上で今か今かと待ち構える牛タンは奴の口へと運ばれてゆく。

 

「なんか、この牛タンなら食える」

「すいませーん! 牛タンの塩の方、二人前追加。ボトルは……これで良いよな?」 

 

『そうか。お前はあの人の事が本当に好きだったんだな』

僕に出来ることなんてたったひとつ。

話を聞くしか出来ない。そして何軒かハシゴして途中でお店の女の子を連れ出して呑んだくれた。胃に食べ物を詰め込ませたし、明日は大丈夫だろう。

 


Sambomaster-Itoshiki Hibi