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左から来る

右からは来ません

じょうしのむれがあらわれた!

トレーニング後にベランダを開け放ってプロテインを飲む時間を愛しているu80です。まるで王者になったかのようなゆったりした得体の知れない心地良さを感じるからです。

でも、まだまだ夜風は冷たいですね。さてと。

 

何ヶ月か前に、スマホを紛失した。

実は普段使いとして購入したものではない。

渡航時のお供として当初は購入したんだ。

現地のSIMを空港の片隅で購入して起動する度に「今回も頼むぜ」と心の中で呟いていたものだ。

 

 

いつしか普段使いのスマホが故障し、渡航時専用機が普段使いへ昇格していた。
それを紛失してしまったのだ。

 

保存していた様々な土地の画像が全部無くなってしまったんだな、と思いながら某通信キャリアのショップで新型のスマホを購入した。

 

ああ、さっきのお姉さんはいい感じだったなあ。素を知らないから、何とも言えないけれどね。

 

そんな事を考えながら、立ち上げて初期設定を終えた。
電話帳はバックアップから戻せたようだし、アプリケーションはあれとあれとそれをインストールして……。

 

新しいスマホに次々と乗り換える人はこんな面倒な事を好きでやっているのだろうか。
正直、スマホが市場に流通し始めた頃から、携帯の置き換え程度にしか感じられず革新性を感じなかった。
所詮はコミュニケーションツールだし。

 

などと考えており、僕は油断をしていた。


僕のLINEのともだちリストは、大統領が刻まれしラシュモア山の如く、瞬く間に威厳に満ち始めたのだ。

 

「見てごらん。神は細部にこそ宿るとか言うがね、まさにそれ」

と、時計職人のように繊細なチューニングで見る間に現場を鎮火したかつての上司。

 

「君を弟子とは認めた覚えはないが……」

そう言いながら快く送り出してくれた、元腕利きハッカー※の上司。

 

「迷わずお前の好きに進め、何かあったら俺が頭下げるからよ」

と、僕の性格を見抜いて、放し飼いにしてくれたかつての上司。

 

「イリーガルだ。全く君って奴は、ホントにイリーガルだ」

と、僕に小言を垂れつつも決して僕を見放さなかった上司。

 

様々な上司、上司、上司。

こんなに畏れ多いLINEは嫌だ。

電話帳から勝手に登録するなんて酷いじゃないか。

僕は速やかに設定変更して、スマホを閉じた。

 

……僕はあの人たちみたいになれたのだろうか。そうとはとても思えない。

 

※牧歌的だった黎明期は栄誉ある称号だったらしく今のそれとは違うらしい。