左から来る

右からは来ません

僕の悪の枢軸

新型パトリオット撃ち込まれても減らず口叩きそうだった某おっさんの弱気発言が続いている。


僕も、そのおっさんも負けず嫌いな所がある。口論にまで発展しないけれど、お互いムシャクシャして場の空気を悪くすることもあった。大概は二人きりなので他所様には害が無いけれど。

前回は採用について食い違いがあり、「何言うてるのか分からんわ」的な態度の僕に対して、

 

 

「もう俺じゃあかんよな」と弱気発言。

 

その言葉を受けた僕は、手応えが感じられずそわそわした。

 

ある休日に突然呼び出されたと思ったら、見知らぬオヤジ二人がドラムとベースを構えていた。ピアノの前には、おっさん。聴いたことすらない曲の初見の手書きの譜面を、僕に向かって放り投げて、「スリー、ツー、ワン」のカウントで演奏始めた。そんな無茶なおっさん。

 

言葉も通じない土地でのドサ回り。全く成果無かった僕に「手ぶらか。遊んできやがって」と言い放った、忌々しいおっさん。

 

あのおっさんは、どこに。

 

今朝はおっさんと来期について軽く会話していた。

あの人はあっちに、この人はそっちへと。

そこへ脈絡もへったくれも無く弱気発言。

 

「俺もいつまで生きとるか分からんでよ」と。

 

「ちょっと、やめて下さいよ。何ですかそれ?」

 

と僕は、なるべく笑顔で軽く流そうとしたが遮られた。

 

「いやな、ほら、かまやつひろしが最近あれだったろ?」

 

ふざけるつもりは無いけれど、突然のムッシュに僕は困惑した。

このおっさんは、セミプロ的な音楽活動を遥か昔にしていたらしく、ひょっとすると何らか縁があったのかも知れない。

聞けばムッシュだけではなく、おっさんの知り合いや友達が次々に亡くなっているらしく気落ちしているようだ。

 

「まあ、その……。お気持ちは分かるつもりです」こんな薄情な僕でも。

 

テーブルに落とした視線を、おっさんの顔へ戻した。そのまま透明になって消えてしまうのではないかと感じる程に、おっさんの存在感が限りなく薄くなっていた。

 

「でな、まずは二人だけれども、お前のところに人を出来るだけ増やそうと思う。若いのも何人か採用して増やしておきたい」

 

何だよそれ、この間はそんなの無理だと言っていたじゃないか。何だか遺言みたいじゃないか、止めてくれよ。カフェのコーヒーが美味くなくなったじゃないか。いつもの嫌味な発言とかないのかよ。それに僕は外様(とざま)だから適当によろしくやっていく。そんなに気を遣わなくてもいいんだよ、おっさん。と目で訴えかけたが、静かに笑みを浮かべるばかり。

 

いつまでも僕の悪の枢軸で居てくれよ、おっさん。こんなの倒し甲斐がないじゃないか。